木工初心者が、本格的な大工技術を教えてくれる木工倶楽部に入会。教習内容を備忘録として書き綴っています。
鑿(ノミ)や鉋(カンナ)に興味がある方、よかったらご覧ください。
四街道 サンデー木工倶楽部とは
前回は 教習⑧ 砥石台制作 最終日 でした。今日から鉋の教習です。
鉋の仕込み
待ちに待った鉋の教習が始まりました。鉋の各部名称や裏金の役割りについては、簡単に自習してきました。それもふまえ、鉋の仕込み方を学びたいと思います。
鉋(かんな)について・各部名称から裏金の役割まで新品の鉋は、仕込みをしないと使えません。調整などをして、使える状態にする事を一般的に「仕立て」や「仕込み」と言います。
鉋の仕込みは、刃の研磨と鉋台の調整が必要。今日は、鉋刃と裏金の研磨をします。
刃を抜く
先ずは鉋台から刃を抜きます。台頭の左右の端を交互に、刃の角度と平行になるように玄能で叩きます。真ん中を叩くと台が割れる可能性があるので、必ず左右の端を交互に叩くことが大事です。
抜けた刃が飛び出さないように刃を押さえながら叩きます。写真ではガッツリ刃を持ってますが、これは間違い。人差し指で裏金だけを押さえれば良いそうです。
鉋刃の調整
耳を削る→ 裏押し→ 研ぐ という流れで行います。
STEP1 刃幅を調整
鉋刃の両側(耳)を、鉋台の刃口の幅に合うように削ります。
なぜなら、刃口の幅に合っていないと、鉋くずが詰まって削れなくなるからです。
鉋で木材を削ると、鉋くずは刃口を通って排出されます。
しかし、刃口よりもはみ出た部分(赤い線)まで刃があった場合、その刃で削られた鉋くずは刃口を通れないので詰まってしまいます。
そういう理由で、刃口の幅に合うように耳を削ります。どれくらい削るかは、裏金を使って計ります。
裏金は刃口幅とほぼ同じ幅。なので裏金の刃幅より鉋刃の幅が少し狭くなるように削れば、必然的に刃口に合うサイズになります。
下写真で分かるように、調整前の鉋刃は裏金より幅が広い状態(裏金の後ろに鉋刃を合わせています)。これではダメなので両側の耳を削り、刃幅を調整します。
使うのは、電動グラインダー!素人には危険だということで、先生におまかせします。
調整前と比べ鉋刃の刃幅が狭くなったので、裏金の刃が鉋刃よりも左右に0.5mmほど飛び出ています。
これで、鉋刃が刃口に合うサイズになったことが確認できました。
STEP2 鉋刃の裏押し
新品の鉋刃は、裏が正確な平面になっていないので、裏押しをして平面にする必要があります。理由は、
鉋刃と裏金の刃先をピタッと密着させるため。
刃先が密着していないと、裏金の役割りである「逆目ぼれを防ぐ」事が出来ないし、隙間に鉋くずが挟まってしまいます。
隙間があるかを確認する方法は簡単。まず、鉋刃と裏金の裏同士をピタッと合わせます。
そして、そのままずれないように両手で持ち上げ、明るい方を見ます。
隙間があると、光が見えます。刃が平らではないということが確認できたので、裏押しをして調整します。
鉋刃の裏押し
刃の裏を平面に研ぐことを裏押しといいます。やり方はノミの時とほぼ同じ。金盤と金剛砂を使います。
参考記事
刃先に力が入るように左手7:右手3ぐらいで体重をかけ、前後に往復。金盤全体を使って研ぎます。
砥いだ面に光を反射させて、歪みがなければオーケー。
STEP3 鉋刃を研ぐ
刃の研ぎ方もノミを研ぐ時とほぼ同じです。
参考記事
しかし、ノミと比べて鉋刃は大きいから持つのが難しい!左右の人差し指と中指の2本で刃先を押さえるように持つと良いそうです。
刃の研ぎ角度は約28°~30° ですが、先生によると「新品の刃の場合はその角度を維持するように研げば大丈夫」との事。
砥石に対して斜め45度に刃を当て、しのぎ面と砥石を密着させる。手首を固定し、ストロークを短くすると手の動きが安定します。
刃返りが出るまで中砥で砥ぎ、次に仕上げ砥石。最後に刃返りを取って完了です。
裏金の調整
裏押し→ 耳を調整→ 研ぐ という流れで行います。
STEP1 裏金の裏押し
次は裏金の裏押しです。裏金は金盤と金剛砂ではなく、ダイヤモンド砥石使います。
なぜなのか聞いたところ「裏金は木材を削る刃ではないので、鉋刃ほど正確に平面にする必要がないから」とのことでした。
ダイヤモンド砥石は研磨力がものすごく強いので、刃が欠けた時や砥石の面直しの時だけ使うようにしています。
参考記事ダイヤモンド砥石で面直し
では、ダイヤモンド砥石の♯1000 を使って裏を平面にします。必ず水をかけて研ぎましょう。
裏押しが終わりました。次は耳の調整をするみたいです。先は長い…
STEP2 裏金の耳曲げ
裏金の耳は、刃先と逆の角が折り曲がった部分。左右の高さを調整して、裏金の刃先と鉋刃の刃先を密着させる役割があります。
左右の耳の高さが合っていないと刃先が密着しない原因になるので確認が必要。まず、鉋刃と裏金の裏同士を合わせて刃先を密着させます。
そして、裏金の一方のすみを指で軽く叩きます。カタカタと音がしなければOK。音がするようであれば耳が浮いているという事なので、調整が必要だと分かります。
耳の調整には鉄床を使います。音が鳴る方の耳を鉄床の角に当て、玄能で叩きます。
カタカタ音がなくなるまで何回か叩いて調整します。調整が出来たら、先程と同じように裏同士を合わせて明るい方を見ます。
鉋刃と裏金の刃先同士がぴったりとついたので、向こうの光が見えません。隙間がなくなったので裏金の耳曲げ調整はこれでOKです。
STEP3 裏金を研ぐ
裏金も鉋刃と同じように研ぎます。しのぎ面の研ぎ方は鉋刃と同じやり方です。
研ぎ角度は25°くらいですが、これも新品なので今の角度を維持するように研ぎます。
鉋刃の研ぎと違う点は1つ。二段研ぎです。
25°に砥いだ後、刃先の先端を60~70°に研ぎ減らします。これを二段研ぎと言います。
裏金の刃は木材を削るための刃でありません。鉋くずを潰すための刃 です。
なので刃先は鈍角に砥ぎ減らし、そこ鉋くずをぶつけます。
使うのはダイヤモンド砥石の♯1000 。上の図のように、しのぎ面を砥石にピタッとあてた状態から上に起こして研ぎます。
上下に往復して研ぐのではなく、一方向のみに動かすと良いそうです。難しすぎるので、先生にやってもらいました。
刃先の幅が0.5mmほどになればOk。その後、二段研ぎの部分だけ仕上砥石で研ぎます。先生、お願いしまーす。
砥いだ刃を鉋台に入れます。
刃を出す手順
砥いだ刃を鉋台に入れます。手順を簡単にまとめると3ステップになります。
- 鉋刃を入れる(下端へ出る少し手前まで)
- 裏金を入れる(鉋刃よりも1mmほど後ろ)
- 鉋刃と裏金の位置を最終調整
先に鉋刃を入れて、次に裏金を入れます。最初から正確な位置には合わせず、まずは鉋刃が下端へ出る少し手前でストップ。裏金を入れてから、最終的に合わせたい位置に刃を調整します。
STEP1 鉋刃を入れる
最終的に出す刃の出具合は、下端から髪の毛1本分の線が見えるくらい。しかし裏金を入れると鉋刃の位置が動くので、最初は鉋刃が下端へ出る直前で止めます。
まず、手で差し込めるところまでギュッと鉋刃を入れます。それから玄能でたたいて打ち込みます。
STEP2 裏金を入れる
次に、裏金を差し込みます。手で差し込めるところまでギュッと入れてから玄能で叩きます。最初は真ん中を叩き、裏金が刃先に近くなったら、左右を少しずつ叩きます。
大事なのは、鉋刃より前に出ないように気をつけること。最終的にはもっと近づけますが、まずは鉋刃よりも1mmほど後ろの位置で止めます。
STEP3 最終調整
だいたいの位置に入れた鉋刃と裏金を、正確な位置まで出します。
鉋刃の出具合は、下端から髪の毛1本分(約0.08mm)の黒い線が見えるくらい。
鉋台を裏返して台じりの方向から確認。目線を下端面に合わせて刃の出具合を確認をします。
刃が出すぎた場合は台頭の両端を交互に叩いて引っこめます。
刃が斜めに出てしまった場合は、出過ぎた方の鉋刃の横を叩き、水平になるように調整します。
一度で調整しようとせず、少しずつ叩いてかたむきを直します
次に裏金の位置を調整します。明るい方に甲穴を向けると、刃のズレ加減が見やすいです。鉋刃と裏金の位置関係は、鉋刃よりも裏金が後ろ。
「鉋刃の刃先から 0.1~0.3mm 後ろに裏金」がくるのが基本です。
裏金は材料を削る刃ではないので、必ず鉋刃より後ろに引きます。しかし、離しすぎると逆目を止める役割を果たしません。逆に近すぎると、チリチリの鉋くずになり刃口で詰まってしまいます。
だからズラシ加減はとっても重要! 目安は 0.1~0.3mm 後ろですが、実際に木材を削ってそのつど微調整することが大事です。
今日の感想
今日は鉋刃と裏金の調整仕方を学びました。グラインダーを使う耳削りや裏金の二段研ぎは先生が全部してくれたので、今後はたして自分で出来るのか不安です。
そして鉋の刃の出具合の正解がまだよく分かりません。鉋を理解出来る日はかなり遠そうです。
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