初心者が本格的な大工技術を教えてくれる 木工倶楽部 に入会。学んだ事の復習や自習した事などを書き綴っています。
前回は 砥石台制作 最終日 でした。
次回は鉋の教習です。事前に鉋について書かれた用紙が配られました。そして先生から一言。
「鉋について詳しく話をすると一日かかるので、各自で読んでおいて下さい」
そういう事なので今回は、配られた用紙を読んで自習した事、そして木工の本で自習した事も合わせて書きます。
鉋(かんな)について
鉋は木材を平面や曲面に削る道具。用途の合わせて様々な種類があります。
一般的に大工さんが使う鉋といえば平鉋(ひらがんな)。平鉋には一枚刃鉋と二枚刃鉋(にまいばかんな)があります。教習で使うのは二枚刃の方です。
二枚刃鉋は、鉋刃と裏金の2枚の刃を鉋台に差し込んで使います。
サイズの呼び方
教習で使う鉋は寸六鉋(すんろくかんな)と呼ばれています。寸六とは一寸六分を省略した言い方で、一寸六分は 約48mm 。そこで、鉋の各部分を測ってみました。
鉋台 | 幅8cm・全長27.5cm |
鉋刃 | 身幅65mm・刃幅55mm | 裏金 | 身幅57mm |
どこを測っても一寸六分(48mm)ではありません。何をもって寸六鉋と言うのでしょうか?
教習所の先輩によると、鉋のサイズの呼び方は 木材を削った時に出てくる鉋くずの幅 だそうです。
寸六鉋で本当に48mmの鉋くずが出るのか?早く試してみたいです。
鉋台(かんなだい)
鉋台は、仕込んだ刃の角度と刃の出具合を保持すると共に、木材の上を水平に移動するための定規の役割りも果たします。
- 台頭(だいがしら)… 両端を叩くと刃が抜ける
- 台尻(だいじり)… 鉋台の1番後ろの部分
- 押さえ棒(おさえぼう)… 裏金を押さえて鉋の刃先と裏金の先を固定する
- 押さえ溝(おさえみぞ)… 溝幅で鉋刃を支え安定させる
- 上端(うわば)・ 下端(したば)… 鉋台の上下の面
- 背中馴染み(せなかなじみ)… 鉋刃の背が接する斜面
- 甲穴(こうあな)… 鉋くずが排出されるじょうご状の穴
- 刃口(はぐち)… 鉋刃が出てくる所
- 木端返し(こっぱがえし)… 刃口の台尻側で鉋くずが出る所
鉋刃(かんなば)の各部名称
鉋刃は、地金(じがね・柔らかい鉄)と鋼(ハガネ・硬い鉄)を接合した刃物。かんな穂または、かんな身とも呼ばれます。
- おもて (面) … 銘が彫られている部分
- うら … 鋼が鍛接された部分・中央に裏すきとよばれる窪みがある
- カエサキ … 地金と鋼の境目
銘が彫られている方の反対面を、背中または甲と呼びます。
銘の反対面は背中。
裏金(うらがね)の各部名称
裏金は、押さえ金または裏座とも呼ばれます。
裏金にも鉋刃やノミの裏と同じように裏すきがあり、これは研ぐ面積を減らすため窪んでいます。
参考記事裏透きの役割り
裏金の耳は、裏すき側に折り曲げられているのが特徴的ですね。曲げる理由は次の記事「鉋の仕込み」で書きます。
裏金の役割
二枚刃鉋は鉋刃と裏金の2枚の刃を鉋台に差し込んで使います。なぜなのでしょうか?
鉋刃と裏金には、それぞれ別の役割があります。
- 鉋刃 … 木材を削る刃
- 裏金 … 逆目を止める役割
「逆目を止める」の意味は? まずは逆目とは何かを見ていきます。
順目と逆目
木材には、きれいに削れる方向と削れにくい方向があります。きれいに削れる方向は順目(じゅんめ・ならいめ)。削れにくい方向を逆目(さかめ)と呼びます。
木材は順目に削るのが基本。しかし実際はそうはいかない事も出てきます。木材によっては順目方向に逆目が混在する場合もあります。
逆目は上の図のように木目に刃が食い込む方向。きれいに削るのが難しく表面がむしり取られたように荒れてしまいます。
削り面が荒れることを「逆目が立つ」とか「逆目が起こる」という言い方もします。
裏金の役割である「逆目を止める」とは、削り面が荒れることを防ぐという意味のようです。
- 順目はきれいに削れる方向
- 逆目は刃が木目に食い込む方向だから削り面が荒れる
- 裏金は逆目を止めて削り面が荒れないように働く
なぜ逆目が止まるのか?
裏金をつけると、なぜ逆目が止まるのでしょう。そもそも鉋刃は木材をどのように削っているのか? 切削の仕組みと逆目が止まる働きを見ていきます。
切削の仕組み
鉋刃がどのように木材を削っているのかを簡単な図にしました。
木材に刃が入ると、刃先で切り開かれた上の部分は 刃にすくい取られるように持ち上がります。更に刃が進行すると、すくい削られた部分は鉋くずになり甲穴から排出されます。
「刃先で切り開かれ、持ち上がる」これがくり返され、木材の表面は削られます。
しかし実際には図のようにきれいに削れない場合があり、その原因のひとつに先割れがあります。
先割れと逆目ぼれ
木材に刃を入れたとき、刃先よりも前の部分が木目に沿って割れることを先割れと言います。
先割れは割り箸を割る時に起こる現象に似ています。割り箸の片側を持ち上げると、切り目に沿って簡単にパキッと割れますよね。
同じように、鉋刃に持ち上げられた鉋くずは切り開かれた部分から、木目に沿って簡単に割れていきます。
では順目と逆目、それぞれで先割れが生じた場合を見ていきます。
下図は順目で先割れが生じた場合。削り面より上が先割れします。なぜなら、木目の方向が上向きだから。
順目方向は先割れしても、その部分は削り取るので表面はきれいに仕上がります。
次は、逆目で先割れが生じた場合です。逆目の場合は木目が下方向なので、削り面よりも下に先割れが進行しているのが分かります。
更に刃が先割れに食い込むと、鉋くずは先割れのいちばん深い根本で折られます。これが連続的にくり返されると削り面は凸凹に。
このように表面がむしり取られたように荒れた状態を 逆目ぼれ と呼びます。
- 順目は上方向に先割れが起こる。その部分は削り落とされるので削り面はきれい。
- 逆目は下方向に先割れが進む。内部がむしり取られ逆目ぼれが起こる。
裏金で逆目ぼれを防ぐ
逆目で先割れが生じると、逆目ぼれが起きる事が分かりました。表面が凸凹になるのは嫌ですよね。そこで裏金の登場です。
裏金をつけると何が変わるのか?
裏金を付けると、先割れを防ぐ効果があります。なぜなのか?まず、裏金をつけると変わる事が2つあります。
- 切削角が変わる
- 土手ができる
まず1つめは切削角が大きく変わることです。切削角とは「逃げ角」と「刃角」を合わせた角度のことです。
鉋刃だけで木材を削ると、こんなかんじ。
裏金を付けるとこう変わります。「切り開かれた部分から木目に沿って割れるので、先割れが生じる」いう話は、先ほどしました。
切削角が大きいと、先割れを抑制することが上図からイメージできると思います。
そして裏金をつけると変わる事の2つ目は土手。実は裏金の刃先は0.5mmくらい砥ぎ減らされて土手みたいになってます。
この土手に鉋くずをぶつけるのがポイント。土手にぶつけて鉋くずを曲げると、 削り面に近い木目(繊維)が圧縮して潰れます。
削り面に近い木目の繊維が潰れるため、木目に沿って先割れもしない。そういった働きで逆目ぼれを防ぎます。
- 切削角を大きくして鉋くずが持ち上げられるのを防ぐ
- 土手に鉋くずをぶつけて潰す
最後に
ちなみに裏金は、鉋刃の刃先よりも少し後ろにずらしてセットします。そうしないと、鉋刃が木材を削れないからです。見てきたように、鉋刃と裏金の役目は違いますよね。
- 鉋刃は木材を削る役目
- 裏金は鉋くずを潰す役目
それぞれの役割を果たすために、刃先のずらし加減は重要なポイントになりそうです。そのあたりは次の記事で。
次の記事