初心者が本格的な大工技術を教えてくれる 木工倶楽部 に入会。学んだ事の復習や自習した事などを書き綴っています。
2回めの教習でノミの研ぎ方を学びました。あれから1年近く経ちますが、未だに砥ぐことには苦労しています。そこで今回は復習をかね、研ぎ方について詳しくまとめてみました。
刃をどう研ぐのか
刃を研ぐとは? 最終的にどのような刃になればいいのか、改めてじっくり考えます。
切れる刃・切れない刃
切れ味が悪くなったノミは、しのぎ面(傾斜の部分)を研ぎ直します。
ノミの穂を横から見ると「しのぎ面」と「裏」2つの面が、先端で交わっているのが確認できます。
2つの平面の先端が鋭角に交わっている 、これが良く切れる刃の形です。
しかし、よく切れていた刃も使っていくうちに切れ味が悪くなります。原因の1つは、刃先が摩耗し丸くなるからです。
2つの平面の先端が交わっていない状態、これが切れない刃の形です。
こうなると刃を研がないといけません。では、どこまで砥げばいいのでしょうか。
研ぎ終わりをイメージする
切れなくなった刃は、どこまで砥げばいいのか?簡単に言うと「しのぎ面が平面になるまで」です。
研いでいくと、丸くなった部分は徐々に砥石によって削り落とされ、やがて平面になります。
平面が出れば自ずと裏の面と鋭角に交わるので、そうなれば研ぎ終わり。研ぎ始めから研ぎ終わりまで、意識するのは「平面」です。
研ぐ=刃先を鋭く尖らせると思いがちですが、それはダメ。「平面を出す」イメージを持って研がないといけません。
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刃返りが研ぎ終わりの合図
しのぎ面が平面になれば研ぎ終わり。しかし実際には、下図のような状態を肉眼で確認するのは難しいですよね。
でも大丈夫。研ぎ終わりを教えてくれる合図があるんです。刃を研いでいくと、刃返りと呼ばれる金属のバリが刃先から裏側にまくれ上がってきます。
刃返りは、しのぎ面の先端が裏の先端と交わった証です。なので刃返りが研ぎ終わりの合図になるんです。
刃返りは薄く出す
刃返りは裏側の刃先を、薬指で軽くなでて確認します。このとき指先に「ザラッ」と刃返りの厚みを感じるようでは、出しすぎです。
刃返りの厚みは薬指で軽く触れ、微かに感じる程度の薄さ。本当に少~しだけ出ればOKです。
厚すぎると何がいけないかというと、厚みのある刃返りは取るのに苦労するうえ、取るときに刃先を荒らしてしまうこともあります。
ムダに刃を研ぎ減らし、ノミの寿命を短くする必要もありません。なので刃返りの出しすぎには注意しましょう。
刃返りは均一に出す
刃返りは刃先全体に均一に出します。薬指に何も感じない部分があれば、そこはまだ砥げていない証拠です。
刃を押さえる場所や力加減にムラがないか、考えながら研ぎ直しましょう。均一な刃返りは「切れる刃の形」を作る上で大事なポイントです。
- 切れる刃の形は「裏」と「しのぎ面」の平面が先端で交わっている
- 「平面を出す」イメージで研ぐ
- 研ぎ終わりの合図「刃返り」は薄く均一に出す
研ぐ前に
どう研ぐのかイメージがつかめたところで、次は砥石の話を中心に、研ぎの工程など基本的なことを頭に入れます。
削る・磨く
研ぎの工程を大きく分けると「削る」「磨く(みがく)」 2つの工程になります。刃の切れ味が落ちたとき最初にすることは、不要な部分を削り落とすこと。使うのは中砥です。
削る工程は「刃の形を作る」ことが目的です。
刃先の摩耗した部分を全て削り落とし、しのぎ面の平面を出します。先にお話した刃返りは、この工程で出てきます。
刃返りが出て刃の形が整ったら、次に磨く工程に入ります。使うのは仕上げ砥石です。
磨く工程は「平滑にする」ことが目的です。
刃の形を作る工程でついた荒い研ぎ傷を消し、更に磨きをかけることで刃の切れ味を良くします。
砥石を平面に直す
切れる刃は、しのぎ面が平面であることがポイントでした。平面に研ぐには、砥石も平面であることが重要です。表面が凹んだ砥石で、平面に研げるはずがありませんよね。
なので刃を研ぐ前に、必ず砥石の表面を平らに修正する面直し(つらなおし・めんなおし)をします。
研ぎ角度
ノミの刃先角度は28°~30°に研ぎ上げます。28度以下だと切れ味は良いけど刃が欠けやすくなり、30度以上だと切れ味が重くなるからです。
刃先角を測る定規も販売されています。研ぐ前や後に、角度の確認をするのに便利かもしれません。
しかし先生曰く「買ったばかりのノミは今の角度を維持して研ぎなさい」とのこと。
ということで新しいノミの場合は、しのぎ面(傾斜の部分)を砥石の表面にピタッと密着させ、その角度をキープして研ぐことを心がけます。
刃の当て方
刃は砥石に対してどう当てるのか?教習では砥石に対し真っ直ぐノミを持ち、刃を当てるように教わりました。
しかし「斜め研ぎ」といって砥石に対し斜めに刃を当てる方法もあるようです。
刃の当て方は自分に合った方法でいいですが、重要なのは砥石の表面に密着させ、その角度をキープして研ぐこと。
研ぐたびに角度が変わると、丸刃になってしまう(しのぎ面の平らな部分が丸くなる)ので注意します。
ストローク
研ぎのストロークは短くするのが良いそう。その方が角度が安定するからです。そして1ヶ所につき何回研ぐのか決めます。
例えば5回と決めたら、砥石の端からスタートさせて5回往復して研ぐ。次にすぐ隣りに移動させてまた5回、また移動して5回という具合に、砥石全体を均一に使って研いでいきます。
- 研ぎの工程は2つ。削って切れる刃の形をつくり、磨いて良い切れ味にする。
- 砥石は必ず平面に。刃のしのぎ面を砥石に密着させて研ぐ。
- ストロークは短く。砥石全体を使って研ぐ。
ノミを研ぐ
では、基本をふまえた上でいよいよノミを研いでいきます。刃の切れ味が悪くなったときに使う砥石は、中砥と仕上げ砥石の2つだけあれば大丈夫です。
STEP1 中砥で刃の形を作る
最初は中砥(#1000)で研ぎます。目的は刃の形を作ること。しのぎ面の平面を出し、裏に返りが出るまで研ぎます。
研ぎ進めるうちに、砥垢(黒い泥のようなもの)が出てきますが、これは刃が削られて生じる金属粉と、砥石から出た砥粒が混ざり合った物です。
研ぎ始めの砥垢は邪魔
研ぎ始めは、出てきた砥垢は水をかけて全て洗い流します。なぜなら、砥垢の粒子は研ぎ進むうちに#1000よりも細かくなるからです。
#1000より細かい粒子では、刃の形を作るのに時間がかかります。なので研ぎ始めは砥垢を洗い流して研ぎます。
中砥の砥垢で磨く
研いでいくと刃返りが出てきます。刃返りが均一に出たのを確認できたら、次は砥垢を残して研ぎます。これは、次の工程に移る前の下準備になります。
先に話したように、砥垢は研ぎ進むうちにどんどん潰れて細かくなります。この細かい砥粒を使い、大きな研ぎ傷を消しておくと次の仕上げ研ぎが楽になるんです。
中砥は、出てくる砥垢をコントロールすることで「削る」「磨く」どちらの工程にも使えるんですね。
ポイントは水の量。砥石の表面が乾いてきたら、砥垢が流れ落ちない程度の水を数滴ずつ足します。
砥石と刃の間に砥垢の膜をはり、それを溶きのばすイメージで研ぐといいそうです。
#1000 の研ぎ傷がある程度消えたら、中砥で研ぐのは終了。磨く工程で刃返りの厚みも最初より薄くなっているはずなので、取らずに仕上げ砥石に移ります。
STEP2 仕上げ砥石で磨く
次は仕上げ砥石(#6000)で磨きます。目的は研ぎ傷を消し、更に磨きをかけることで刃の切れ味を良くすることです。
仕上げ砥石の場合は始めから砥垢を使います。砥垢が流れ落ちない程度の水を数滴ずつ足しながら、面を磨き上げるイメージで研き上げます。
映り込んだ景色を見る
研ぎ傷が消えると、徐々に鏡のようになってきます。そうなったら、研いだ面に自分の顔や景色などを映してみます。
鏡面に映り込んだ景色に歪みが無ければ、しのぎ面が完全な平面に研ぎ上がり切れる刃がついた証拠です。
大事なことは鏡面にすることではありません。少し曇っていても、映り込んだ景色に歪みがなければ切れる刃になっています。
他に、刃を爪の上で軽くすべらせて確認する方法もあります。
刃が爪の上でツルンと滑らずに、ジョリっと引っかかる感触があれば切れる刃がついた証拠です。
STEP3 刃返りを取る
最後に刃返りを取ります。刃返りは刃先から裏側にまくれ上がった金属のバリ。取るときは裏側を砥石に当てます。
刃返りを取るときに大事なことは「優しくなでつけるように」です。まず裏の平面(刃先から1~2cm)を砥石にピタッと密着させます。
そして、優しくなでつけるように2~3回往復。ここで強く砥石に押し付けてしまうと、刃先が荒れるので注意しましょう。
刃返りが取れない場合
優しく2~3回往復しても刃返りが取れない場合、原因は1つ。刃返りの出しすぎです。「刃返りは薄く出す」 で書きましたが、中砥で刃返りを出す際、厚みは薬指で微かに感じる程の薄さだけ出します。
出しすぎていても、中砥の「磨く」工程で薄くなれば良いです。しかしそうでない場合、仕上げ砥石で分厚い刃返りを取るのはムリ。もういちど中砥の「磨く」工程に戻って徐々に薄くする、または中砥で刃返りを取ってしまう方が早いかもしれません。
いずれにせよもう一度、中砥と仕上げ砥石で磨く工程を行い、最後に薄く出た刃返りを取ります。
このように、刃返りを分厚く出すことはムダに刃を研ぎ減らし、ムダに研ぎに時間を使います。刃返りの出しすぎには注意しないといけませんね。
刃返りが取れたら、研ぎは終了です。
保管方法
研ぎ終わったら、必ず乾いた布で水気を拭き取りサビ止めの油を塗ります。
刃物には乾燥しても固化しない「不乾性油」を使用します。椿油はサラサラと伸びが良く、変な匂いがないのでおすすめです。
最後に
今回ノミの研ぎ方をまとめるために、習った事を思い出したり教習場の先輩方に話を聞きましたが、分かったことは研ぎ方の正解はひとつじゃないということ。
例えば、教習では「中砥で出た刃返りは中砥で軽く取る」と教えてもらいました。
しかし、中砥で刃返りを取ると裏の平面が崩れるので研いではいけないと言う方もいます。そして刃返りの取り方もいろいろ。
砥石で取るほか、ダンボールや木片になすりつけて刃返りを取る方法なんかもあるそうです。
僕は素人なので、違う方法を目にするとどれが正しいんだろう?と悩んでしまいますが、今回は習ったことをふまえつつ、自分がやりやすいと思った方を選択してまとめてみました。
研ぐときのノミの持ち方や砥石の当て方など、どれが自分にとって正解なのかまだまだ手探りの状態ですが、今回まとめた事を頭において精進します。
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