初心者が本格的な大工技術を教えてくれる 木工倶楽部 に入会。学んだ事の復習や自習した事などを書き綴っています。
木工倶楽部で作業台(馬)を製作中。前回は墨壺を使い、角材に長い直線を引きました。
いつもの事ですが先生の手本を見ている時は、自分にもできそうに思います。しかし実際にしてみると、やっぱり難しいもの。
今回は長い直線を引く方法を、復習をかねてまとめました。
直線を引く方法
サシガネよりも長い直線を引く場合、墨壺があると大変便利です。
参考記事
墨を含ませた糸をつまんで放すと、木材の表面に墨が付きます。糸を弾いて叩きつけるので、この作業は「墨を打つ」とも言われます。
墨打ち 3ステップ
墨を打つ方法を簡単にまとめると、3ステップになります。
STEP.1 カルコを材料に突き刺し、引きたい直線の始点に糸を置く。
STEP.2 墨壺を引いて、壺口から糸を引き出す。
STEP.3 終点に糸を置き、強く張る。糸をつまみ上げて放す。
3ステップで、このような長い直線を引くことができます。
きれいな直線を引くには?
墨打ちは糸をつまんで放すだけの簡単な動作のように見えますが、これが実際にやってみるとかなり難しいです。
僕のような素人がすると、こんな感じになります。
どうすればきれいな線が引けるのか? 僕なりにまとめたポイントは5つです。
- 墨汁の量
- カルコは深く刺す
- 糸を強く張る
- 真っ直ぐ持ち上げる
- 乾く前に打つ
では、きれいに直線を引くポイントを順番に見ていきましょう。
Point① 墨汁の量
墨壺の池の中には、つぼ綿(つぼわた)入っています。この綿に含ませる墨汁の量がポイント。墨汁を入れすぎると、木材に糸を叩きつけた時に墨が飛び散ります。
逆に少ないと、かすれたり薄い線になるので墨汁の量は加減が大事。
墨汁を入れてから時間が経つと、水分が蒸発して濃度が高くなることがあります。そのときは水を少しずつ補充して、適度な濃度に戻します。墨が薄くなってしまった場合は、墨汁を足して調整します。
Point② カルコは深く刺す
カルコの差し込みが浅いと、糸を強く引っ張る際に針が抜け、ビヨ~ンと自分の方へ飛んできます。
危険なうえに墨が飛び散り木材が汚れるので、カルコは抜けないようにしっかりと深く突き刺します。
このとき、カルコの針に糸を1~2回からめてから木材に刺すと、針で刺した点と糸が同じ位置になり始点がずれません。
Point③ 糸を強く張る
糸を弾く前に「張り」を強くします。張りが足りないと、勢いよく木材に当たらないので薄い線になってしまいます。
大事なポイントは、壺車が回転しないように手のひらで固定すること。
糸を強く張ろうとしても、壺車の回転を止めていないと、スルスルと糸が出て緩んでしまいます。必ず、壺車を手のひらで固定するのを忘れずに。
Point④ 真っ直ぐ持ち上げる
糸は垂直に、真っ直ぐ持ち上げます。斜めになっていると、正確に墨付けができません。つまむ指先にも注意。指先をひねって糸をつまむと、放した時に糸が揺れて墨線がブレます。
糸をつまむ位置は「始点と終点の真ん中」です。遠すぎてつまめない場合はできるだけ手を伸ばし、墨壺から離れた位置で持ち上げます。
腕を遠くへ伸ばした不安定な姿勢になりますが、がんばって垂直に持ち上げます。
Point⑤ 乾く前に打つ
慣れないうちは糸の引っ張り具合に手こずったり、真っ直ぐ持ち上がっているか気になったりで、なかなか指を放すことが出来ないかもしれません。
でも、そうしている間に糸に付いた墨はどんどん乾いていきます。乾くと木材に墨が付かないので、なるべく早く指を放して墨を打ちましょう。
墨打ちに挑戦
きれいな直線を引くポイントが分かったところで、実践です。
下準備
先ずは下準備。線を引きたい部分の始点と終点に印を入れます。
次に、糸に十分な墨を含ませます。カルコを柱などに刺して固定。墨差でつぼ綿を押さえながら、後ろに下がり糸を引き出す。
適当な長さまで引き出したら、糸を巻き取る。これを2回ほどくり返します。
始点に糸を合わせる
まず始点に糸を合わせます。ちなみに先ほど「針に糸をからめて刺すと始点がぶれない」という話をしました。
しかし木口面にカルコを刺す場合は、カドに始点がくるので糸をからめる必要はありません。
カルコを深く突き刺したら、始点に糸をロックオン!
糸を引き出す
始点から糸がずれないように気をつけながら後ろに下がり、糸を引き出します。
終点まで糸が引き出せたら壺車の回転を止め、糸を強く張り終点に糸を置く。
ここで注意。終点に糸を置く前に、必ず右手で糸を上に持ち上げます。なぜなら持ち上げないと、墨が下に付いてしまうからです。
終点に糸を置く
終点に糸を置き、押さえる方法は2通りあります。
壷車の回転を止めて糸が張った状態から、墨壺をクイッと45度手前に曲げます。そうすることで更に糸が引っ張られ、強く張ることができます。
その状態をキープし、人差し指で糸を押さえ終点に糸を置きます。
壷車の回転を止め、墨壺の頭部を木口面にピタリと当てます。終点に糸を置き、下に引っ張って糸を強く張ります。
糸の押さえ方はやりやすい方でOKですが、いずれの場合も壺車が回転しないように手のひらで固定する事と、反対の手で糸を持ち上げておくことを忘れないように。
糸を弾く
糸を強く張り終点に置き、右手でつまんでいた糸を放します。
適量の墨と適正な張りで糸を弾くことで、くっきりと正しい直線を引くことができます。
最後に
教習で習った事を思い出しながら、きれいな直線を引く方法をまとめてみました。
壷車の回転を止め糸を強く張る→ 右手で糸を持ち上げる→ 終点に置いて糸を弾く という手順を素早く行えるようにしたいです。
何回も定規を当てないといけない長い木材でも、一発で直線が引ける「墨打ち」を習得すれば、きっと木工に役立つと思います。
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