木工初心者が、本格的な大工技術を教えてくれる木工倶楽部に入会。教習内容を備忘録として書き綴っています。
鑿(ノミ)や鉋(カンナ)に興味がある方、よろしかったら参考にして下さい。
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2020年7月19日・3回目の教習
前回は 教習② ノミの裏押し・研ぎ でした。
今日の教習は「木材について」の話からです。
教習時間は、9:30~12:30 (3時間)
木材の性質を知る
これから木材を加工するにあたり、最低限知っておくべき「木材の基礎知識」を学びます。
❶ 木目の模様
木目とは木を切った断面に見える年輪などの模様のこと。年輪は年に1本刻まれます。
木の成長の証でもある、年輪が作りだす木目模様は本当に美しい!

自然のものなので、一つとして同じ模様がないのが魅力ですよね。模様の種類は、ざっくり3つに大別できます。

- 板目(いため)… タケノコのような模様
- 柾目(まさめ)… 直線的なシマ模様
- 杢目(もくめ)… 不規則で独特な模様
板目・柾目という分類に当てはまらない複雑な模様を杢目といいます。その独特な模様に希少価値があるとして、珍重されるそうです。
さて、上の写真の板目と柾目、 実は同じ杉の木なんです。でも、模様がぜんぜん違いますね。
例えば一本の丸太から木材を切って取り出すとします。実は年輪に対してどのように切るか、製材の仕方で模様が違ってきます。

- 板目 … 丸太の中心を外し、年輪に沿うように平行に切る。
- 柾目 … 丸太の中心から外側に向かって、年輪に対しほぼ直角に近い角度で切る。
※丸太の中心を通して平行に切ると、柾目になる。
※中心から少しずれると、板目と柾目の中間的な部位の追柾目(おいまさめ)になる。
板目は一本の丸太から効率よく取れますが、柾目は少ししか取れないので高価になります。でも反りや収縮などの狂いが少ないのが、柾目の良いところ。
板目は柾目よりも安価ですが、反りやすいのがデメリットです。
❷ 木表と木裏
木材には、表と裏があります。表と裏を見分けるいちばん簡単な方法は、木口を見ること。木口とは年輪が見える部分で、木材を繊維に対して直角に切ったときの切断面です。

板目の場合、木口に見える年輪のカーブが山になっている方が木表です。山になっている側は木の樹皮(円の外側)に近い方。だから木表とよびます。
- 木表(きおもて)… 樹皮に近い側。年輪のカーブが山になっている方。節が少なく、木目がきれい。
- 木裏(きうら)… 樹心に近い側。木裏は木表よりも木目が悪く、ささくれやすい。
❸ 木表はなぜ凹むのか
板目材は、乾燥し水分が抜けていくにつれ木表側が縮み、凹状に反っていくそうです。

教習では、なぜ反るのか?の話は無かったので本やネットで調べたところ、異なる2つの説明を見つけました。
- Ⓐ 含水率(がんすいりつ)の違い
- Ⓑ 接線方向と放射方向の収縮率の違い
Ⓐは「木表は若くて水分が多い。よって乾燥すると大きく縮む。水分が少ない木裏との収縮率の違いから、反りが生じる」という説明。
しかし、これは間違いだとするのがⒷです。
Ⓑは「方向によって収縮率が違うから反る」という話です。
木材の方向を表現する場合に、接線方向と放射方向という呼び方があります。

- 接線方向 … 年輪に沿う方向・放射方向と直交する
- 放射方向 … 年輪の中心から外に向かう方向
そして木材は、その方向によって性質が異なります。そのうちの一つが伸縮の違い。

接線方向の収縮率と放射方向の収縮率の比率はおよそ 2:1 。
板目の板で収縮が起きた場合、放射方向(木裏側)が1%収縮した場合、接線方向(木表側)はその2倍の2%も収縮します。
すでにお気づきかもしれませんが、接線方向と放射方向は、板目と柾目の切る方向と同じですね。

木表側の水分が多いから反るのではない、接線方向と放射方向の収縮率の違いで反る。というⒷの方がなんとなく納得ができました。
じゃあ、そもそも何で収縮率が違うのか?ですが、木材細胞の接線方向の壁が放射方向の壁よりも収縮しやすい構造だからだそうです。
話がめっちゃ長くなりそうなので、おすすめの本を紹介します。『プロでも意外に知らない〈木の知識〉』林知行 著
木材の知識ゼロの僕には難しすぎる内容がてんこ盛りですが、とても勉強になる本です。木表がなぜ反るのか?も、こちらの本を参考にさせていただきました。ぜひ読んでみて下さい。
表を上?裏を上?
これから教習で作るのが下の写真のような砥石をのせる台です。ここで、先生から出題。
Q.砥石台は「木表」と「木裏」どちらを上にして作るべきでしょうか?

A.正解は「木裏を上」でした。
なぜなら、木裏を下にしてしまうと台の底がU状になってしまい、安定しないからです。
例えばフローリングを貼るときは? 答えは「木表を上」。木裏よりも木目が美しく剥がれにくいので、きれいに仕上がります。
間違って木裏を上に貼ってしまったら、ささくれが足にささってしまう危険な床になってしまいますね。
逆に、ウッドデッキは「木裏を上」が良いみたい。理由は木裏を上にすると水はけが良くなるからです。木表を上にするとカーブの凹んだ部分に雨水がたまってしまいますね。
❹ 元と末
木の根に近い部分を「元」。空に向かって伸びている方が「末」。それぞれの切り口を「元口」「末口」といいます。

元口と末口の見分け方はいろいろあるそうですが、木口の年輪の幅や色、向きを見る方法があります。

- 年輪の幅が広い方が元口
- 赤身が多い方が元口
- タケノコのような模様の上側が末口、下が元口
住宅の柱として使う場合は、「元口」を下にして山で生えていた向きと同じ状態で使ったほうが長持ちしてで強いそうです。
その他にも、様々なシーンで使い分けされています。
- 木表を鉋掛けする時は末口から元口へ。木裏は元口から末口に鉋を引くと、毛羽立ちが無く仕上がる。
- 木材を凹凸に加工して接合する継手(つぎて)の場合は、凹は元口を、凸は末口を使う。
- 薪割りは、元口を上にして割ると割りやすい。
赤身が多い方が元口。
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木材の基礎知識を勉強しました。次は曲尺と墨付けを学びます。
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