初心者が本格的な大工技術を教えてくれる 木工倶楽部 に入会。学んだ事の復習や自習した事などを書き綴っています。
3回めの教習で初めて墨付けをしました。今回は教習では詳しく話がなかった、墨壺について書きます。
墨壺(すみつぼ)とは
墨壺は木材に寸法線を引いたり、加工の印を付ける「墨付け」道具です。
墨壺は本来木製で、大工さんが自分で作っていました。実用的でシンプルなものから、縁起を担いで鶴や亀の彫刻を施したものまで、様々な墨壺が作られたそうです。
教習で使うのはプラスチック製ですが、これにも鶴と亀がくっついています。プラスチックに変わっても、木製だった頃の名残をとどめているデザインが何とも興味深いですね。
墨壺の各部名称
墨壺を初めて見たとき、その仕組みはとても複雑そうに見えました。が、実はとてもシンプルな作りです。
木材に刺して糸を固定する「カルコ」、糸を巻き取る「壷車」、墨汁を含ませた真綿を入れる「池」。墨壺は主に、この3つで成り立っています。
使い方
短い直線や印付けは、墨差に池の墨汁をつけて使います。
また、墨を含ませた壺糸をピンと張り、つまんで放すと長い直線を引くことができます。
なぜ墨壺を使うのか
鉛筆を使うと、手軽に線が引けます。一方、墨壺は初心者には少し扱いづらく、手も墨で汚れます。それでも墨壺を使う理由は、鉛筆やペンよりも優れた点があるからです。
- 濃い線が引ける
- 凹凸に影響されない
- 長い直線を引ける
例えば鉛筆やペンは、木目の凸凹に引っかかり線がガタガタになる場合があります。
しかし、糸を弾いて叩きつける墨打ちは木目に影響されずに、きれいな直線を引くことができます。
墨は鉛筆よりも濃く、くっきり見やすい線が引けるのも特長です。
いちばん便利な点は、何回も定規を当てないといけない長い木材でも、一発で直線が引ける ことでしょう。
凸凹がある面や長い木材にも、くっきり見やすい直線を引くことができる墨壺は、とても便利ですね。
つぼ綿(つぼわた)を入れる
新品の墨壺はもちろん、池の中は空っぽです。使う前に、墨汁を含ませる「つぼ綿」を入れなくてはいけません。つぼ綿は簡単に作ることができるので、自作してみました。
用意するもの
- ワタ
- ガーゼ
- 縫い針と糸
ワタの量は、ふんわり丸めて池に入るくらい。それを2つにちぎって使います。ガーゼは、ワタを包めるサイズにカットします。
作り方
まず、ガーゼの四辺を並縫い。そして中央にワタをおき、縫い糸の端を引っ張ります。
ワタが全て隠れるまで引っ張ったら、玉止めをして口を閉じます。同じようにして、つぼ綿を2つ作ります。
入れ方
つぼ綿1つを、糸の下に入れます。
そして糸を挟むように、もう1つのつぼ綿をのせます。
つぼ綿がパンパンに詰まっているように見えますが、墨汁を注ぐとワタがしぼんで丁度よくなります。ワタの量を決めるとき、ふんわり丸めたのはこのためです。
墨汁とつぼ綿
これで準備完了。墨汁を注ぎ、ワタ全体に染み込ませます。墨汁は必ず専用のものを使いましょう。
書道用の墨は代用できそうに思いますが、「ニカワ」が入っているので使えません。ニカワは冷えると固まるので、墨壺中で糸が固まって引き出せなくなります。
また、墨壺に使用するワタはポリエステル繊維ではなく、木綿のワタがおすすめ。天然綿は墨含みが良く、墨も乾きにくいそうです。
今回はワタとガーゼが家にあったので、つぼ綿を自作しました。しかし市販品もあります。
「たくみ マルチ壺綿」は、綿(セルロース)とメッシュの袋がセットで入っている商品。
実際に墨壺に入れると、こんな感じです。
少しワタの量が少なく感じましたが、自作するよりも手軽で便利な商品です。
最後に
今回はつぼ綿の作り方や、墨壺を使う理由などを紹介しました。実際にどのようにして長い直線を引くのか、そのあたりは次の記事を参考にしてみてください。
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