「はじめちょろちょろ、なかぱっぱ…」という懐かしく心地よいこのフレーズ、実は物事を丁寧に、順序立てて進める大切さが込められている気がして、僕のブログ名にも採用しています。
さて、この有名なフレーズですが、皆さんはその後に続く言葉や、それぞれの工程に隠された「美味しい理由」をご存知でしょうか?
今回は、意外と知らない全文の意味や科学的な根拠、さらには地域ごとに違うバリエーションまで、詳しく紐解いてご紹介します。
目次
なぜ「歌」として伝わっているのか?
この言葉が生まれたのは、まだ炊飯器やガスコンロがなかった江戸時代。当時は「かまど」に薪をくべ、鉄製の釜で火力を手動調節しながらご飯を炊いていました。
スイッチ一つで炊ける現代とは違い、当時は火加減ひとつで味が大きく変わる真剣勝負。そんな時代に、最高に美味しいご飯を炊くための手順を、誰もが間違えないよう覚えやすく歌にしたものが、
火加減と手順の黄金レシピ
だったんですね。当時の人々にとって、このフレーズはまさに「美味しいご飯の教科書」だったわけです。
全文と意味
「はじめちょろちょろ…」に続く、気になる全文がこちらです。
はじめちょろちょろ中ぱっぱ、じゅうじゅう吹いたら火をひいて、ひと握りのワラ燃やし、赤子泣いてもふた取るな
実はこれ、単なるリズムの良い歌ではなく、現代の科学でも証明されている「理にかなった炊飯法」なんです。それぞれの工程に隠された意味を紐解いてみましょう。
①はじめちょろちょろ
意味:最初は弱火でじっくり温める
お米の甘みを引き出す酵素(アミラーゼ)は、40℃〜60℃の間で最も活発に働きます。最初にあえて「ちょろちょろ」と火を抑えることで、お米が最大限に甘くなる時間を稼いでいるのです。
②中ぱっぱ
意味:一気に強火にして沸騰させる
沸騰したら一転、火の粉が舞うほどの強火でお米を踊らせます。100℃以上の高温を保つことでお米を「糊化(こか)」させ、ふっくらと粘りのある状態へと変化させます。ここで火力が足りないと、芯が残る原因になります。
③じゅうじゅう吹いたら火をひいて
意味:吹きこぼれそうになったら火力を落とす
勢いよく吹く「おねば(旨味)」が逃げないよう、火を弱めてコントロールします。高い蒸気圧を維持したままじっくり加熱することで、お米の芯まで熱と水分を浸透させていきます。
④ひと握りのワラ燃やし
意味:仕上げの「追い焚き」で水分を飛ばす
一瞬で高温になるワラを燃やし、釜に残った余分な水分を飛ばします。これによってお米一粒一粒の表面がシャキッと立ち、ツヤが生まれます。香ばしい「おこげ」が作られるのもこの瞬間です。
⑤赤子泣いてもふた取るな
意味:火を止め、余熱でじっくり蒸らす
最後は「蒸らし」の工程です。ここでふたを取ると、釜内の温度が急激に下がり、お米の表面に水分が残ってベチャついてしまいます。最高の炊き上がりのために、最後の一刻までじっと我慢するのが鉄則です。
「赤ちゃんが泣いても開けるな」という表現の強さからは、当時の人々がいかに一食のご飯を神聖なものとして捉え、真剣に炊き上げていたかが伝わってきますね。
地域で違う?面白いバリエーション
実はこのフレーズ、地域や家庭によってさまざまな「続き」が存在します。代表的な3つのパターンを見てみましょう。
はじめちょろちょろ、中ぱっぱ、赤子泣いてもふた取るな
まずは、最もポピュラーな短縮バージョン。工程がギュッと凝縮されていて、とにかく覚えやすいのが特徴です。まずはここから教わった、という方も多いのではないでしょうか。
はじめちょろちょろ、中ぱっぱ、ブツブツいうころ火を引いて、ひと握りのワラ燃やし、赤子泣くともふた取るな
こちらは「ブツブツいうころ」という表現が面白いパターンです。音を頼りに火加減を判断していた、当時の台所の情景がよりリアルに伝わってきますね。
はじめちょろちょろ中ぱっぱ、じゅうじゅう吹いたら火をひいて、赤子泣いてもふた取るな、そこへばば様とんできて、わらしべ一束くべまして、それで蒸らして出来あがり
なんと「ばば様」が登場するユニークなバージョンも!「追い焚き(わらしべ一束)」の重要性を、おばあちゃんの知恵袋として語り継いでいる、心温まる一節です。
この他にも地域ごとに数多くのバリエーションがあるようです。皆さんの周りでは、どんな風に歌われていましたか?調べてみると、新しい発見があるかもしれませんね。
現代の「土鍋」と昔の「釜」の違い
土鍋でおいしく炊く5ステップ
現代のご家庭で土鍋を使って炊く場合は、以下のような手順が一般的です。鉄釜との火加減の違いに注目してみてください。
- 浸水(30分〜)
お米の芯までしっかりと水を吸わせます。これがふっくら仕上げる最大のコツです。 - 沸騰するまで「強火」
だいたい10分ほどかけて沸騰させます。土鍋なら最初から強火でOK! - 沸騰したら「弱火」で15分
沸騰後は弱火に落として加熱を続けます。土鍋の蓄熱性で、弱火でも内部は高温に保たれます。 - 仕上げに「強火で5秒」
火を止める直前に一瞬だけ強火に。余分な水分を飛ばし、お好みでおこげを作ります。 - しっかり「蒸らす」
火を止め10分〜15分。蒸らすことでお米の水分が均一になり、芯までふっくら炊き上がります。
なぜ土鍋は「最初から強火」でいいの?
「はじめちょろちょろ(最初は弱火)」と言っているのに、なぜ土鍋では最初から強火にするのでしょうか。その秘密は、道具の「素材」にあります。
昔の炊飯道具である「鉄釜」は、熱伝導が非常に良く、火にかけるとすぐに熱くなります。そのため、最初から強火にするとお米に熱が入りすぎてムラができやすかったのです。
対して「土鍋」は、土でできているため熱を溜め込む性質があり、温度がゆっくりと上がっていきます。つまり、強火にかけても勝手に「ちょろちょろ」と加熱されているような状態になるため、最初からアクセル全開で大丈夫なんです。
キャンプの定番「飯盒(はんごう)」で炊く場合は?
キャンプやアウトドアで飯盒を使ってお米を炊く際も、この「はじめちょろちょろ…」の教えは非常に役に立ちます。ただし、飯盒ならではの特性に合わせた調整が必要です。
飯盒炊爨を成功させるポイント
飯盒の多くはアルミ製で、鉄釜や土鍋に比べて「熱が伝わりやすく、冷めやすい」という特徴があります。そのため、以下のポイントを意識してみましょう。
- 「浸水」で甘みを補う
アルミはすぐに沸騰してしまうため、加熱だけで「はじめちょろちょろ」の甘みを引き出すのが難しいです。その分、炊く前に30分〜1時間しっかり浸水させておくことが、美味しさを左右します。 - 火加減は「音」と「匂い」で判断
沸騰して「ジュウジュウ」と吹きこぼれが始まったら少し火を遠ざけます。水分がなくなって「チリチリ」という音に変わったら、それが火を止めるサインです。 - 「逆さま」にして保温する
飯盒は火から下ろすとすぐに冷めてしまいます。タオルなどで包み、逆さまにして15分ほどしっかり蒸らしましょう。逆さまにすることで底に溜まった水分が全体に行き渡り、ムラなく仕上がります。
道具の進化や素材の違いはあっても、先人たちが歌に込めた「火加減の重要性」は、現代のアウトドアシーンでも最高のスパイスになってくれますね。
【比較】道具別・火加減と時間の目安
道具の素材や厚みが違えば、理想的な火加減や時間も変わります。それぞれの目安をまとめてみました。
| 工程 | かまど (鉄釜) |
土鍋 (粘土) |
飯盒 (アルミ) |
|---|---|---|---|
| はじめ (沸騰まで) |
弱火で約10分 じっくり温度を上げる |
強火で約10分 鍋の厚みで徐々に加熱 |
中火で約5〜10分 浸水が短ければ弱火推奨 |
| 中ぱっぱ (沸騰後) |
強火 お米を踊らせる |
沸騰を維持 吹きこぼれに注意 |
強火 一気に糊化させる |
| 火をひいて (本炊き) |
弱火〜中火 約10分 |
弱火 約15分 |
弱火 約10〜15分 (チリチリ音まで) |
| 追い焚き (仕上げ) |
一瞬強火 ワラを一束くべる |
強火で約5秒 水分を飛ばす |
強火で約10秒 おこげを作る工程 |
| 蒸らし | 15分〜20分 | 10分〜15分 | 15分 (しっかり保温) |
※時間はあくまで目安です。お米の量や火の強さ、外気温によって調整してください。特に飯盒は「音」や「匂い」での判断が大切です。
おわりに
「はじめちょろちょろ…」というフレーズの続きや、そこに隠された深い意味についてご紹介しました。
スイッチ一つで美味しいご飯が炊ける便利な時代ですが、改めて紐解いてみると、音や蒸気の様子にまで気を配る先人たちの知恵には驚かされるばかりです。一つひとつの工程に「美味しくなれ」という願いが込められているからこそ、あんなにもリズムの良い歌として語り継がれてきたのかもしれませんね。
僕自身、この記事を書きながら、じっくりと時間をかけて炊き上げる「かまどご飯」を無性に食べてみたくなりました。皆さんも、もし土鍋やキャンプでお米を炊く機会があれば、ぜひこの「黄金レシピ」を思い出してみてください。



