木工初心者が、本格的な大工技術を教えてくれる木工倶楽部に入会。教習内容を備忘録として書き綴っています。
鑿(ノミ)や鉋(カンナ)に興味がある方、よろしかったら参考にして下さい。
四街道 サンデー木工倶楽部とは

2020年11月15日・11回目の教習
前回は 教習⑩ 鉋台の下端調整 でした。
今回の教習は ❶墨壺で直線をひく ❷鉋をかける です。
墨打ちを学びます。
墨壺(すみつぼ)とは
墨壺は、長い直線を引くための墨付け道具。
墨を含ませた糸をつまんで放すと、墨が木材の表面に付き直線が描けます。糸を弾いて叩きつける事で墨が付ので「墨を打つ」とも言われます。

墨壺は本来木製で、大工さんが自分で作っていました。実用的でシンプルなものから、縁起を担いで鶴や亀の彫刻を施したものまで、様々な墨壺が作られたそうです。
教習で使うのはプラスチック製ですが、鶴と亀がくっついています。木製だった頃の名残をとどめるデザインが何とも興味深いですね。
墨壺の各部名称
墨壺は、主に3つの部分で構成されています。

木材に刺して糸を固定するカルコ、糸を巻き取る壷車、墨汁を含ませた真綿を入れる池。この3つで、成り立っています。
なぜ墨壺を使うのか
鉛筆やペンで線を引くことも出来ますが、墨壺を使うメリットはどこにあるのでしょうか?
- くっきりとした濃い線が描ける
- 凹凸に影響されない
- 長い直線を引ける
鉛筆だと木目の凸凹に引っかかり、線がガタガタになります。鉛筆より濃い線が引けたり、何回も定規を当てないといけない長い木材でも一発で直線が引ける。これが墨壺のメリットです。
墨壺の使い方
墨壺の基本的な使い方は3ステップ。先生のお手本を見ます。

カルコを材料に突き刺し、引きたい直線の始点に糸を置く。

墨壺を引いて、壺口から糸を引き出す。

終点で糸を押さえて、ピンと張る。糸をつまみ上げて放す。糸が木材に叩きつけられ、長い直線が引けました。
墨壺で長い直線を引く
糸をつまんで放すだけの簡単な動作のように思いますが、これが実際にやってみるとかなり難しいです。
どうすればきれいな墨線が引けるのか、5つのポイントを見てみましょう。
上手に引くポイント5つ
- 適量の墨を入れる
- カルコは深く突き刺す
- 壺車の回転をとめる
- 糸と指先を真っ直ぐ持ち上げる
- 乾く前に打つ
墨壺の池の中には、綿(わた)が入っています。この綿に含ませる墨汁の量がポイント。
墨汁を入れすぎると、木材に糸を叩きつけた時に墨が飛び散ります。

逆に少ないと、かすれたり薄い線になるので墨汁の量は加減が大事。

墨汁を入れてから時間が経つと、水分が蒸発して濃度が高くなることがあります。そのときは水を少しずつ補充して、適度な濃度に戻します。墨が薄くなってしまった場合は、墨汁を足して調整します。
墨汁は必ず専用のものを使いましょう。
書道用の墨は代用できそうに思いますが、冷えると固まる「ニカワ」が入っているので使えません。中で糸が固まって引き出せなくなります。
墨汁の量は多すぎず、少なすぎず。そして専用の墨を使うことが大事です。
② カルコは深く突き刺すカルコは抜けないように、しっかりと深く突き刺します。差し込みが浅いと、糸を強く引っ張る際にビヨ~ンと抜けて、針が飛んできます。
危険なうえ、木材の上に墨が飛び散って汚れるのでカルコはしっかりと突き刺します。

このとき、カルコの針に糸を1~2回からめてから木材に刺します。針に糸をからめる事で、針で刺した点と糸が同じ位置になり始点がずれません。
③ 壺車の回転をとめる引きたい長さまで糸を引き出したら「張り」を強くします。張りが足りないと、勢いよく木材に当たらないので薄い線になってしまいます。
大事なポイントは、壺車が回転しないように手のひらで固定すること。

糸をピンと張ろうとしても、壺車の回転を止めないとスルスルと糸が出て緩んでしまいます。必ず、壺車を手のひらで固定するのを忘れずに。
④ 糸と指先を真っ直ぐ持ち上げる墨を引きたい直線上に、糸を垂直に持ち上げます。斜めになっていると線が曲がってしまいます。
そして持ち上げる位置は、なるべく遠く。墨壺から離れた位置で持ち上げます。

また、つまむ指先にも注意。指先をひねって糸をつまむと、放した時に糸がブレます。持ち上げた糸が斜めになったり、ひねりが加わらないように注意します。
⑤ 乾く前に打つ慣れないうちは糸の引っ張り具合に手こずったり、真っ直ぐ持ち上がっているか気になったりで、なかなか指を放すことが出来ないかもしれません。
そうしている間に、糸に付いた墨は乾いていきます。乾くと木材に墨が付かないので、なるべく早く指を放して墨を打ちましょう。
初心者が墨打ちに挑戦
ポイントが分かったところで、いざ実践です!
先ずは下準備。線を引きたい部分の始点と終点に印を入れます。

次に、糸に十分な墨を含ませます。カルコを柱などに刺して固定。墨さしで綿を押さえながら、後ろに下がり糸を引き出す。

適当な長さまで引き出したら、糸を巻き取る。これを2回ほどくり返し、糸に墨をしっかり含ませます。
準備完了。いよいよ墨を打ちます!先ほど入れた始点に糸を合わせます。
ちなみに、先ほど「針に糸をからめて刺すと始点がぶれない」という話をしました。

しかし木口面にカルコを刺す場合は、カドに始点がくるので糸をからめる必要はありません。

カルコを深く突き刺したら、始点にロックオン!始点から糸がずれないように気をつけつつ、後ろに下がります。

線を引きたい所まで糸を持って行ったら、壺車の回転を止めてピンと張った状態にします。
ここで注意。終点に糸を合わせる前に、必ず右手で糸を上に持ち上げます。なぜなら墨が下に付くから。
回転を止め、ピンと張る→ 右手で糸を持ち上げる→ 終点に糸を合わせる という順番です。
さて、この時の墨壺の位置と糸の押さえ方ですが、2通りの方法があります。
方法① 墨壺をクイッと45度手前に向けて糸をピンと張る→ 人差し指で糸を押さえる。

方法② 墨壺の頭部を木口面にピタリと当て、糸を下に引っ張ってピンと張る。指で押さえ無くてもOK。

どちらの方法でも、先に右手で糸を持ち上げるのを忘れないように。
糸をピンと強く張り、終点に合わせました。では、右手で持っていた糸を放します。とりゃ!

ペシッ!!

はい、失敗! 墨汁の量が多すぎたようです。

角材は4面あるので、ひたすら墨を打つ練習をくり返します。ペシ!ペシッ!
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